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ミュージカル座公演 ミュージカル「ひめゆり」を観劇に行った [独り言]

なんとなく食指が動いたので、ミュージカル座創立15周年記念
公演・終戦65年特別企画の、「ミュージカル ひめゆり」を観に、
はるばる出かけていきました。
「ひめゆり」って何?というかたは、「沖縄」「ひめゆり」の
キーワードで検索されるとよいと思います。

自分が観たのは、星組の公演です。
全編、歌でつづられる、この舞台、便宜上、“言う”という
表現を使わせていただきますが。

学徒さん達が、全員揃って、学校の先生の話を聞く始めのシーン、
先生が、“家に帰るか、お国の為に働くか”、というところで、
もう、自分は、家に帰りなさい、せめて、家に帰りなさい、と
思って、しかし、そうできなかったからこそ、このお話がある訳
なんですが。

おばかな(その当時の多くの国民がそうであったように!)軍国
少女が、お国の為に、みたいな事を言う一方で、家に帰りたいと
思う子もいて、でも、そうか、家に帰りたくても、その子にも
家族にも、非国民って、悪魔の言葉が、待っているだけなんだね…

学徒さん達は、今でいう高校生なのかな、戦時下とはいえ、やっ
ぱり若い女の子の集団だから、きゃあきゃあしている、その若さが
また切ない。

学校を卒業した学徒さん達は、軍の病院で、看護要員として働き
始めます。
負傷者であふれた病院、現実を突きつけられて、立ちすくむ
学徒さん達、手前のほうでは、話が進んでいくんですが、その
後ろ、ステージの全部で、お芝居が繰り広げられていて、目が
足りない状態。
誰も、ただそこにいる、のではなくて、生きて、そこにいる。

学徒さん達から、その容赦のなさで、忌み嫌われている軍曹が
いて、その軍曹が、また、たちの悪いマザコンで、母親が殺さ
れた私怨で戦争してんのかよ!、みたいな。
今となっては、どうしてあんな虚しい戦争に突き進んだんだ
ろう、と思う、その軍部を象徴するかのように、民衆をふみ
にじり、支持を失い、孤立の中で、滅んでいきましたが。

婦長さん役のかたが、全編、歌もお芝居も素晴らしくて、軍人
役のかた達も、民衆のかた達も同様、その中で、残念だったのが、
主役?の軍国少女ですよ…
なんだろう、あの説得力のなさ…

どのシーンも素晴らしくて、なのに、その軍国少女がメインの
シーンでは、自分のテンションが、だだ下がり…
キャラが立ってないっていうんですかね? まぁ、高校生に
一貫性を求めても、という気もしますが、それにしても…

人としての尊厳を捨てざるをえないような、地獄をみてきた
兵隊さんが、生きてはいけない、と言うのに、その軍国少女は、
生きなきゃだめ、みたいに返して、しかし、その兵隊さんが、
銃弾に倒れると、一変、私も殺して!、と叫ぶ。
いや、お嬢さん、今さっき、生きてこそ、みたいな事、言って
たじゃん…
いや、お芝居の意図は、わかっているつもりなんですが、そこ
を突っ込ませない芝居、というものが、自分には伝わってこなくて、
狂言回し的な役どころ、と、割り切ってしまうしかなかったです。

戦況が厳しくなって、学徒さん達は、先生や婦長さん、軍人と
一緒に、病院を放棄して、逃げまどいます。
その混乱の中で、みなとはぐれてしまう学徒さんもいて、家を
めざす者、敵につかまる前に命を絶て、と教えられてきたけど、
自決する勇気がなくて、ただ、さまよう者、と、運命は、分か
れて行きます。

隠れ潜んだ洞窟?の中で、学徒さん役のかたが、“鳥になって
家へ”というような1曲を、歌い上げた、その歌が素晴らしかっ
た!
基本的にどのシーンも素晴らしくて、シーン毎に、拍手したい
ぐらいだったんですが、へたに拍手を入れると、たたみかける
ような展開や雰囲気をこわしてしまうようで、でも、その歌の
時には、拍手が出ました。

婦長さんを中心に、それでも明日を夢見ようとする学徒さん達、
学徒さん達に、そんな今を与える事しか出来なかったおのれを
悔やむ先生。
その先生が、学徒さん達の空腹をおもんばかって、キャベツを
とってくる、と、言い出します。

いや、もう、それ、絶対、悪いフラグだから!
自分以外の、観客のかたも思ったに違いないです。
駆け出して行く先生、悲痛な声で止めようとする学徒さん達、
銃撃の音。

しかし、やがて先生は、キャベツをかかえて、戻ってきた!
よかった…、と思った瞬間、撃たれて倒れる先生、ころがる
キャベツ、先生にすがろうとするけれど、逃げざるをえない
学徒さん達。
キャベツは拾われていったので、先生の想いは、無駄には
ならなかったようです。

文字にしてみると、コントみたいなんですが、実際、後から
落ちついて考えてみれば、なぜ、沖縄でキャベツ?、とか、
キャベツ食べたら、胃腸の調子がよくなって、余計、空腹が
つらくなるのでは?、とか、畑からとってくるって、それ、
そもそも泥棒なんじゃ…、とか、いろいろ思うところはあるん
ですが、そのシーンも、もう、滂沱の涙。

時々、歌っていないで、早く逃げろ!、と思っている自分が
いて、お芝居に引き込まれるとは、そういうものなのかも
しれません。

家をめざした学徒さんが、なつかしい家の前まできて、お母
さんを呼ぶ、お母さんが家から出てきて、悲鳴のような声を
あげて、お母さんにすがりつく学徒さん。
きっと彼女は、家族のもとで、命長らえた、と信じたい。

潜んでいた洞窟に攻撃を受けて、ほとんどの学徒さん達が
命を失っていくのですが、全編において、学徒さん達は、
歌もお芝居も素晴らしかったです。
どの学徒さんも、ステージの端のほうでも、後ろのほうでも
細かいお芝居をされていて、全体が見える席で、もう一度、
いや、月組のもあるから、二度、三度と、観たかった!

さまよえる三人組の学徒さん達とか、洞窟の中で、集団から
ちょっと離れたところで、本を読んでいる学徒さんとか、こまかい
エピソードをとりあげていくと、きりがないので、このぐらいに
しておきますが、一週間足らずの公演日程は、いろいろ事情が
あるのでしょうが、あまりにも、短い。

太平洋戦争の事をよく知らない、人によっては、存在自体を
知らない、という、若いかたにこそ、観て欲しい作品です。
えー、いやだったら、家に帰ればいいじゃん?、と、考えられ
るかもしれませんね。
でも、そうは出来なかった、そういう時代があったのだ、と
いう事が、きっと、わかっていただけると思います。
そういう説得力があったお芝居でした。

何度もいいますが、お芝居も歌も、本当に素晴らしかった
です。

素晴らしかった、という表現しか思い浮かばない自分が
はがゆいんですが、ステージの上には、確かに、ひめゆりの
学徒さん達がいて、それをとりまく人々がいて、その時代が
あった。

もちろん、現実をご存じのかたは、ああではなかった、と
思われるのかもしれません。
でも、自分にとっては、観劇のその間中、目の前でくりひろげ
られる、自分は、結末を知っている、そのつらい運命を、なすすべも
なく、ただ、泣きながら見ている事しかできなかった、その時間は、
“現実”そのものでした。
うまく、表現できませんが。

かの戦争で命をおとされたかたに、合掌。
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